運転中、後ろに車を近づけられただけで、
なぜ人々の心には怒りという感情が込み上げるのでしょうか。
あなたは今までに他の運転手に怒ったことがありますか?
他のドライバーは何をしてあなたの気分を害したのですか?
運転中に生じる怒りで、一般的な考えは、
などが挙げられるでしょう。
人々がこれらのトラブルに直面したとき、
大抵は他のドライバーを非難します。
ボクたちは、他の運転手を失礼または無能と見なす傾向があります。
重要なことは、統計的にみて、
ボクたちのほとんどは同じような行動をしているということです。
しかし人は、いつも自分自身を客観視することは出来ません。
自分自身を失礼、無能、または馬鹿と呼ぶことはほとんどないでしょう。
自分が運転中に、何らかの問題を起こしている時というのは、
本人にしか知りえない正当な理由があります。
1年に1度しか開催されない、大事な息子のダンス発表会に遅れそうです。
前方車両はノロノロ運転…片側一車線…イライラは募ります。
あなたは乱暴に幅寄せして、強引に追い越すかもしれません。
では、相手の状況を考えてみましょう。
前の車の運転手は、エンジントラブルにより、これから整備工場に向かっている途中でした。
ゆっくりと走るのには理由があります。
あなた自身も、相手と同じ立場ならノロノロと走行するかもしれません。
この場合、両者の視点だけでみれば、両者とも被害者です。
今社会問題になっている「煽り運転」などの自動車走行中トラブルのほとんどは、
このような個人的緊急事態の重ね合いによって発生しています。
子供が急に高熱を出してしまったから、母親は車をぶっ飛ばして病院へと走り出します。
その車があなたの後ろにピッタリとついたとしても、
あなたは相手の車内状況を何も知りません。
だからあなたは道を譲らないかもしれませんが、
それは故意ではありません。
この場合もまた、互いが互いに腹を立てているのは変わりありません。
そして怒ったあとは、いつも自分は正しいと思ってしまいます。
そんな考え方があるから、運転中のトラブルは絶えないのです。
しかしこれは、自分を守るためには必要な心理なので、
矛盾しているようですが、現代人は皆いたって正常です。
自分には非がない!
そう割り切って公言できるのには、もう一つ理由があります。
それは自分は今どんな状況に置かれているかを、よく知っているからです。
知っています。
そんな自分を守るために、
他の自動車(他人)の状況を考慮する余裕がなくなってしまいます。
自分にとって利益的なことを自分に帰属させ、
問題点は相手や環境に帰属させようと考える、
これを帰属エラーと呼びます。
この基本的なエラーこそ大きな問題です。
では、実際にドライブ中起こりえる帰属エラーの原因には、
どんなものがあるか確認してみましょう。
休日の買い物、悪天候時など、交通量が多くなると渋滞は本当に人々を腹立てます。
どこかに行くという目標を妨げているだけでなく、
ストレスレベル、欲求不満など怒りを高めることもあります。
そしてこの怒りこそ、帰属エラーを増大させます。
ボクたちは個人空間に守られた自分の自動車に乗っており、
他の人に声を聞かれたり、車内をじっくり見られたりすることはほぼありません。
匿名で参加できるネットの掲示板サイトのように、
他の運転手に文句を投げつけます。
された方は、相手が誰であるかを知りません。
匿名の条件下では、
人々はより厄介で、より強気になる傾向があります。
運転中は匿名性が強い、ということは、
同時に責任感が欠如する傾向にあります。
責任が課されている緊張した心理状態では、
人は帰属エラーを起こしにくくなりますが、
匿名では責任感も低くなるため、まともな判断がしにくくなります。
1人で運転中なら、
よりいっそう匿名性が強くなり、責任感は欠けていきます。
残念なことに、2人、3人と複数名でドライブしていた場合でも、
自分たちに非があると認めるグループは少ないでしょう。
むしろ全員こぞって相手を非難して、自分たちを正とするでしょう。
それだけ車内というのは、情報の孤立された空間なのです。
あなたを怒らせた相手運転手に対して、正当なジャッジをくだしたくても、
運転中にとれるコミュニケーション方法は限られています。
などを試みても、正しく相手に気持ちが伝わらないことの方が多いでしょう。
安全に運転するには、
より認知力を高めて、多くの場所に目を向け注意を払う必要があります。
この注意力を高めたり集中を維持するという行為は、
精神に負担がかかり。帰属エラーを引き起こしやすくなる要因になります。
たとえマルチタスクが得意な人でも同様です。
他の車を意識するだけでも、多くのエネルギーを消耗するのに、
ほとんどのドライバーは、
などなど、数多くの重要ではない事に意識を注いでいるため、
他人の車内状況など全く気にすることが出来ないのです。
ボクたちのほとんど(特に若い人)は、
自分の運転技術は平均よりも優れていると考えています。
しかし、実際に「平均を上回る」ことができるのは、私たちの約半分に過ぎません。
そして皮肉にも、実際には若い成人の方が事故率が高いです。
「自分よりも遅く運転している人はバカであり、自分より速く運転している人はアホだ。」
なんて思いながら運転している人は、どれだけ居るでしょうか。
偏見は対人関係に悪影響を及ぼします。
この状況を改善する方法は、
自分が他のドライバーであることを想像することです。
考えられる理由は何ですか?
前方車両または後方車両が迷惑運転をしている訳は、沢山あるはずです。
あなたが、「自分は迷惑ドライバーではない」と確信しているなら、
他の運転手の良し悪しを即断しないように気を付けましょう。